Thursday, July 17, 2014

さぁパワートレーニングを始めよう!Part3 理論編③

さぁパワートレーニングを始めよう!Part3はパワートレーニングによるトレーニングの効率化と精神的アドバンテージ、そしてデメリットについてです。

(5)効率的にトレーニングが出来る。
自転車に夢中になり、乗れば乗るほど強くなる時期(1-2年)が過ぎ、レースでも頭打ちになる時期は必ず訪れます。その時、選手がハマりやすい落とし穴は「もっとたくさん乗ればもっと強くなる。」症候群です。
しかし一定期間乗り込み、持久的運動を行う心肺機能・筋持久力の基礎が出来たら(これをエアロビックベースと言います。)、次に行うべき強化はエアロビックパワーを上げる事です。言い換えれば、もっと遠くに行ける能力ではなく、もっと速く走れる能力を強化すべきなのです。
パワーメーターがあれば、レースで必要な能力を的確に知りその強化を行う事が出来ます。

(6)精神的負荷が減らせる。

Ian Boswell
間違えてはいけないのは効率的なトレーニング=楽なトレーニングではない!という事です。
自分の弱点を把握しそこを責めるのは、精神的にも肉体的にもキツい作業です。しかしパワーメーターをある時は"手綱"として使い、ある時は"ニンジン"として使うことで精神的負荷を減らすことが出来ます。
たとえばコーチに「死ぬ気で頂上まで走れ!」と言われて無我夢中で走るのと「AVG300wを頂上まで維持してみよう!ベストタイムが更新できるはずだ。」と言われるのでは同じ努力であっても、精神的負荷は随分違います。

選手は常に自分のコンディションがどこにあるのか?自分のトレーニングが上手く行っているのか?次のレースでどの辺まで行けるのか?など常に多くの「?」を抱えながら戦っています。

しかし、パワートレーニングで進捗状況をつねに振り返ることで、正確に自分の位置を知る事ができ精神的な安心感を得ることが出来ます。

(7)パワーメーターを使うデメリット
パワーデータは財産です。
・初期投資が必要 
パワートレーニングを始めるのにパワーメーター + ヘッドユニット + PCは必ず必要です。PCは既にお持ちだとしても最低10~15万円の投資は必要です。誰にとっても10~15万円の投資は大きな金額です。
しかし、パワーメーターを使う事により、1年後には今よりずっと強く、健康になれると考えると投資の価値は充分あります。また記録される日々のデーターは今後の競技活動に価格では表せない価値を生む財産と言えます。

・使い方が難しい 
機械が苦手な方にはヘッドユニットの使い方やデータダウンロードが、やや難解かもしれません。しかし、最近の機器はよく考えられており一旦慣れてしまえば直観的に操作が出来るようになると思います。

・解析が難しい 
パワートレーニングに関する知識がないと、解析が難しいのは事実です。また中途半端な知識で解析すると自分自身で自分をミスリード(mislead誤った方向に導く事)してしまう可能性があります。しかし基礎的な知識を身に着ければ簡単な解析はどなたでも出来るようになります。

・修理が難しい 
パワーメーターはバイクパーツの中でも複雑な部類に入ります。壊れたら自分で修理するのは、ほぼ不可能です。海外通販などで購入すると、国内でメンテナンスが受けれない事もありますのでお近くのプロショップで購入された方が無難です。

・時に残酷である。 
パワーをダイレクトに測るということは現実を突きつけられます。目標のパワーに全く達していなければ、「気合で何とかなる」レベルではない事がレース前に分かってしまいます

・設定の間違いが悲劇を生む 
自分の長所・弱点にフォーカスしトレーニングが行えるのはパワートレーニングの大きな利点です。
しかし、肝心のFTPの設定が間違っていたり、設定が合っていても処方するトレーニングがアンバランスであったりすると、「見当はずれのトレーニングにフォーカスする。」という悲劇を生みます。
①FTPトレーニングをしているつもりが設定値が低すぎてテンポ走になっていた。
②あまりにFTPにフォーカスした練習を行いスプリントの強化を怠った為、完走率は上がったが勝てないスプリンターが出来上がった。
などというのは、間違ったパワートレーニングが生む悲劇です。

随分と前置きが長くなってしまいましたが、いよいよ次回は実際ロードに出てFTPを測定してみましょう!




Peaks Coaching Group
ハンターアレン、中田尚志(共著)

ハンター・アレン…全米自転車競技連盟Level1認証コーチ。元プロ・ロード選手。1995年よりあらゆる種目のコーチングを手掛け世界チャンピオン、全米チャンピオンを始め1,000以上の勝利に貢献している。全米自転車競技連盟パワートレーニング講座の講師。
パワー・トレーニング・バイブル(原書:Training and racing with Power Meter)他、著書多数。










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